LOGIN5年後
私は男女の双子の母となり、安藤涼禾(あんどう すずか)という名で安藤夫妻の正式な養女として暮らしている。 「ママー、早くー、もうみんな待ってるよー!」 「はいはい、すぐに行くわ!」 まだ肌寒さは残るものの、かなりぽかぽか陽気になってきたので、今日は家族でお花見に出かけることにした。 今年の夏で四歳になる双子の陽亮(ようすけ)と夏蓮(かれん)はこのお花見が計画された3日前から、楽しみで楽しみで、ずっと待ちわびていた。 当初は両親が、庭の桜の咲き具合を楽しげに語り合っているのを微笑ましく聞いていただけだった。それが、偶然颯太と健人の帰宅が重なった日の夕食で、子供の頃のお花見での思い出話となり、久しぶりにみんなで出かけようということになったのだ。 その日は珍しく全員空いていて、予報では天気にも恵まれそうとのことですぐに決まった。 朝早くから家政婦の中村さんと涼禾がお弁当の準備をし、簡単に朝食を済ませ、いざ出発という時、父徹の携帯が鳴った。申し訳なさそうな顔で携帯の画面を見た徹だが、一瞬目を見開き途端に嬉しそうな声で通話を始めた。 「久しぶりじゃないか!元気だったのか?」 皆から少し距離を取りながらほんの数分話した後、通話を終えた徹が戻ってきた。 「いや、済まなかったね。さぁ今度こそ出発だ。」 1時間半程車で移動し、目的地に着いた。 ここは安藤家が所有している温泉付き保養施設だ。街の中心からほど近い山の麓にあり、広々とした敷地と豊かな自然に恵まれ、季節の趣を楽しめる人気の場所だ。予約制ではあるが、社員やその家族たちにも開放されている。 一行が到着した時には既に数組の家族連れなどで賑わい始めていた。 早速、花見を楽しめそうな場所を確保し、準備を施設のスタッフに任せレストハウスで休息するために移動した。 建物に入るや否や奥から落ち着いた雰囲気の年配の男性が現れ、一行に声をかけてきた。 「やあ、待っていたよ。思ったより早く着いてね。」 「えっ?江崎のおじさん?」 「うわぁ!ほんとに久しぶりだ!」 颯太と健人が思わず感嘆の声をあげ彼に早足で近づいた。「はは、2人とも相変わらず元気そうで何よりだ。」 「どうしたんですか、朝からこちらに?」 「いや、昨日隣の街へ用事で来てね。懐かしくなって一泊してから会いに来たんだ。」たまらず駆け寄り抱きしめかけた隼翔は、数歩手前で立ち止まり、「涼禾、やっと会えた。今日もとっても綺麗だよ。」と恐る恐る手を差し出した。その目は一点の曇りもなく、薄っすら浮かんだ涙のせいで一層キラキラ輝いていた。涼禾は、自分の不安を一瞬で綺麗に拭い去った隼翔の笑顔に、心からの笑顔を返して、「ありがとう、隼翔さん。これからもよろしくお願いします。」と言って差し出された手を両手で包み込むように握り返した。そこで安心した隼翔は素早く涼禾を抱きしめて、「涼禾、よかった。僕の方こそよろしくね。」と涙を流した。「やっぱりパパ泣いちゃったねぇ。」「やっぱりね。」陽亮と夏蓮は嬉しそうに笑いながら、「「パパ、ママ、結婚記念日おめでとう!!」」と二人に駆け寄った。隼翔はその会の間中、とうとう一度も涼禾から離れずに、会が終わっても病室に泊まり込んで皆を心配させた。しかし、その翌日から涼禾は目に見えて回復して1週間ほどで退院した。2年後、同じ病院で涼禾は退院を翌日に控えていた。退院準備の為に手伝いに来ている佐和子が、大きなため息をついた。「いよいよ退院だけど、明日から大変よ。もう一人家政婦さんを頼んだ方がいいんじゃない?」「やっぱり2人じゃ足りないかしら。」「暫くはあなたも無理できないでしょ?陽亮と夏蓮もいくらしっかりしていてもまだ2年生だし。」「そうねぇ。それに今回は元気な男の子ばかりだし。成長スピードもすごいしねぇ。」3週間前、涼禾は一卵性の三つ子を出産した。2年前、涼禾が回復してから隼翔が、「ねぇ涼禾、陽亮は雅輝にべったりだし、夏蓮は亮君や従兄弟たちにベッタリなんだ。僕にも僕に一番懐いてくれる子が欲しいと思わない?」と度々言うようになった。涼禾は笑いながら聞き流していたが、やがて妊娠に気づいて検査してみると何と三つ子だと分かった。双子に続いて三つ子とは…と不安になったのもつかの間、隼翔と江崎夫妻は大喜びだった。これで自分たちにも”一番“ができる、と。細身の涼禾にとって三人はかなりの負担だったが、周囲の手厚い支えがあって、やや未熟児ながらも手術で無事に生まれてくれた。三人は生まれてからどんどん成長して、今では通常の新生児並みになっている。「やっぱり三人じゃ狭かったのかしら?」真剣な顔で言う涼禾を見て、佐和子がくすくすと笑う。「か
雅輝は思わずプッと噴き出して、「確かに。これは兄さん泣くね。」と笑い出した。亮もつられて、「ふふっ、気の毒…でも…あはは…。」と笑い出した。涼禾は訳が分からず陽亮と夏蓮を見ると、二人もにこにこしながら、「パパがねぇ、ママが会ってくれないってずっとしょげてるの。」「せめて明日ぐらい、少しでもいいから会えないかって。何日か前から部屋の前をうろうろしたり、おばあちゃんたちに様子を聞いたり。今日も私たちに聞いてきてくれって。」涼禾は困ったような顔になり、「パパがママに会いたいって?」「当たり前じゃない。」「何で僕だけ会ってくれないんだってブツブツ言ってるよ。」「パパ、無理して仕方なくとか……。」「「そんなわけがない!」」「ママ、パパはね、ママが大好きなんだよ。」「昨日もこの部屋の前をクマみたいにうろうろしてたって、おばあちゃんに叱られてた。」「隼翔さんが……、クマ?」家族の前以外では、いつも冷静な態度と冷たい眼差しの彼が?涼禾はその光景を思い浮かべて、思わずくすっと笑ってしまった。亮が穏やかな笑顔で涼禾に言った。「姉さん、もういろいろ考えなくていいんだよ。自分の心の望むままにすればいい。」「そうそう、弟の僕から言わせて貰えば、うちの兄はとても単純で純粋なんだよ。そして、びっくりするくらい一途なんだ。姉さん限定でね。」四人と話しているうちに、涼禾の心の強張りがすうっと解けていくような気持ちがした。「ありがとう、みんな。陽亮、夏蓮。パパに伝えて。明日の夜はみんなで記念日のお祝いをしましょう、って。」「「やったー!!!」」双子の喜びの声に続いて、雅輝が燥いで問いかけた。「姉さん、姉さん!みんなって僕は入ってる?父や母は?亮ちゃんは?」「ちょっと!僕は当然入ってるでしょ?」涼禾は賑やかな四人に笑顔で答えた。「みんなよ。私は大丈夫だから、亮ちゃん、参加者を決めるのも含めて準備をお願いできるかしら。」「任せて!姉さん。じゃあ、決まったからには姉さんは明日の夕方まではゆっくり休んでいてね。」「そうだね。もちろん僕も手伝うからね。」雅輝がそう言うと、四人は嬉しそうに会の準備について話しながら帰って行った。涼禾は、ほうっと一息ついてまた眠りについた。その表情は、1年前の最高に幸せだった頃に戻ったような穏やかなものになっていた
「信じてる。でも、嫌悪感なんて頭で分かってても感じてしまうものでしょう?彼に我慢させるなんて耐えられない。」「………。」「隼翔さんと結婚できて、家族として過ごせた半年足らず。とっても幸せで……、彼があの頃と変わってしまったらと思うと……。会いたいの。でも、……。」娘の複雑な気持ちを聞いて、かける言葉に詰まってしまった佐和子だった。それでも、「ねぇ、涼禾。2年ちょっと前のこと、覚えてる?」「隼翔さんと再会した頃?」「ええ、あの頃もあなた、怖いって言っていたわね。」思い出す仕草をした後、小さく頷いた。「ええ。今とは違う理由だったけど。」佐和子も一つ頷いてから話を続けた。「あの頃は陽亮と夏蓮に背中を押して貰ったようなものだったけど、会ってみてどうだった?」涼禾はまた少し考えて、思わずくすっと笑った。「彼は……、彼のままだった。ううん、思っていた以上に私を想ってくれていて、嬉しかった。」「そう。私はね、あの頃以上に、彼はあなたを大切に想ってくれていると思うわ。」「……。」「焦ることはないわ。気が向いたら考えてみて。」佐和子は少し話し込みすぎて疲れさせてしまったかと心配になり、話を終えて休むように勧めた。素直に頷いて横になり、目を閉じた涼禾を見守ってから静かに部屋を後にした。翌日の午後には、亮と雅輝が付き添って陽亮と夏蓮が会いに来た。二人は幼稚園での様子やそれぞれの習い事の様子を報告した。「ママ、私ね、こんどはじゅうちゃんから“けんどう”をならうの。」「空手と合気道はもういいの?」「どっちも続けるよ。でもね、私はまだ小さいからむずかしいことはできないの。元気なからだをつくるのが一番なんだって。」「そう。いい先生に習っているのね。」 「ママ、僕はキーボードの早打ちソフトで記録を更新したよ!雅輝さんに習ってプログラミングも始めたんだ。」「陽亮もすごいわね。でも頑張りすぎて目を悪くしてはだめよ。」「うん!ちゃんとお休みしながらやっているよ。」涼禾は二人の頭を撫でながら亮と雅輝を見た。「亮ちゃん、雅輝さんありがとう。あなたたちの研究は順調かしら?」「来月から治験段階に進むよ。まずは3ヶ月間のデータを見てそれからの方針を決めていくつもり。治験者には聡美さんや島田さんの奥さんも参加してくれるんだ。」「島田さんの奥さん?」「あ
「ママ、ありがとう。」「ママ、いつまでもみんなで待っているからね。」二人から差し出された花束を受け取れるように、佐和子が涼禾の手を取ろうとした。が、それより先に涼禾が自ら花束を受け取った。そして、「夏蓮、陽亮、少し会えなかった間に大きくなったわね。こんなママで、ごめんね。」と言うと、しっかりと二人を見つめ涙を浮かべた。涼禾の変化にその場にいた全員が息を呑んだ。「…涼禾……?」佐和子の呼びかけに、ゆっくりと顔を向けると、「お母さん、ごめんなさい。」ひと言返してまた眠りに落ちていった。ほんのひとときではあったが、涼禾が周囲に穏やかに反応したのは事件以来初めてのことだった。幼いとはいえ、男の子である陽亮に対しても拒否反応はなかった。僅かではあるが、今度こそ回復の兆しを得た皆は心から聡美に感謝した。聡美は、「私の方こそ皆様に感謝しています。私の拙い作品をこんなに素敵な場で披露させていただけたのですから。」と返した。この日をきっかけに、涼禾は少しずつ自分を取り戻し始めた。9月になり、結婚記念日まであと三日という日、涼禾の病室の前には朝から熊のようにドアの前をうろうろする隼翔の姿があった。ドアが開いて中から出てきた美沙は、その姿を見て呆れたような顔をして声をかけた。「まだいたの?」「だって、……お母さん。なぜ僕だけだめなんだ?陽亮や亮君、雅輝だって会えるようになったのに。この間は安藤のおじさんや颯太くんと健人君まで会えたじゃないか。そのうちお父さんや剣太郎君や柔治狼君も会えるようになりそうなんだろう?なのに何で僕はだめなんだ!」「情けない子ね。それだけ涼禾さんがあなたを特別に思っているってことでしょ。彼女の気持ちの整理がつくまで落ち着いて待ってあげなさい!」「だって……。」この3ヶ月間、涼禾は起きて正気を取り戻して過ごせる時間が少しずつ増えてきた。演奏会以前は、長時間眠り続けたり、起き上がってもぼんやりとして周囲に反応できなかったり、異性に怯えて距離を取ろうとしたりという状態だった。それが、夏蓮と陽亮を認識できたのをきっかけに、弟の亮と義弟の雅輝にも会えるようになった。室内に入っても拒否しなくなって、更に慣れて少し話せるようになり、短時間ながら以前のように親しみを持って接することができるようになった。佐和子や美沙や夏蓮や
今までは何かの催しや、時折訪れる慰問の演奏者たちによって演奏されるだけだったが、この春休みだけは違った。二日に一回の間隔でお昼休みになると、1時間ほど演奏されるのだ。その曲たちは、ほとんどが誰もが聴いたことのある馴染みのあるものが、日によって変えられながら演奏されていた。ただ、毎回最後に演奏される1曲だけは同じ曲で、今まで聴いたことのない穏やかで、優しい曲だった。この二日に一度の小さな演奏会は、入院患者のみならず病院内のあらゆる人達の心を癒していった。春休みが終わり、この演奏会が無くなって多くの人達が残念に思った。涼禾もまた、その一人だった。演奏会のある日は、お昼になると必ず起き上がり、穏やかな顔で耳を傾けていた。そして最後の一曲を聴き終えると、時折頬に一筋の涙が溢れることもあった。砂川先生によると、感情を取り戻す兆候なのではと期待も持たれた。しかし、演奏会が無くなった後はまた、ほとんど横になったままの生活に戻ってしまった。そんな涼禾を見て、隼翔は一つの決心をした。涼禾を現在の中京市の病院から東都の病院へと転院させる事にしたのだ。移動時の疲労や環境の変化がかなりの負担になるだろうことは予測された。しかしそのリスクを冒してでも、家族の側で過ごして欲しいという思いが勝ったのだった。5月の半ば、細心の注意を払って涼禾の転院が行われた。やはり、転院直後の数日間は熱を出したり、悪夢に魘されたりと不調が続いた。けれどそれもだんだん落ち着き、やがて穏やかに過ごせるようになっていった。涼禾が転院したのは、瀬川グループ系列の病院で設備も環境も素晴らしかった。その素晴らしさのひとつとして、ピアノが常設された小ホールがあることが挙げられる。ある週末、その小ホールで少し変わった演奏会が計画された。観客が女性限定なのだ。なぜ?と思う人もいたが、ここは病院なのだから、おそらく何かの事情があるのだろうと納得したようだった。演奏会当日。佐和子と美沙、それに亜沙美と果奈も車椅子で参加している涼禾に寄り添うように席に着いた。観客は八人の患者ごとに、そのサポートメンバーとまとまって席を用意している。時間通りに演奏者の聡美が入って来た。アイスブルーの、天使のように清らかなイメージの衣装に身を包み、微かな微笑みを浮かべながら演奏が始まった。どの曲も初めて聴くもの
『やめて…、誰か助けて…』くぐもった言葉にならない声が漏れる。何度も同じ目に遭ってしまう自分の愚かさが嫌になる。そんな涼禾を嘲笑うかのように男の言葉が続く。「だけどさぁ、せっかくの印が薄くなっちゃっているんだよねぇ。お仕置きを兼ねてもう一度しっかり身体に刻んであげなくちゃあ、ねぇ。」男がニヤリと笑いながらポケットから取り出した物を一振りすると、シュルリ、としなやかな音と共に焦げ茶色の革紐が垂れ下がった。「今度こそ完全に君は僕の物になるんだ。」パァーン!男が革紐を両手で強く引き、強度を確かめる音が響いた。その音が涼禾の脳裏に5年前の出来事を全て蘇らせてしまった。延々と続いた暴力に因る苦痛と、容赦無く浴びせられる暴言による屈辱、逃れられないと言う絶望感。それらから心を守る為に記憶を閉ざしていたのに。思い出してしまった今、まるで他人事のような諦めの言葉が浮かんだ。『今度こそ私は壊れてしまうんだ。』そんな涼禾を意に介することもなく、男は容赦無く大きく腕を上げて力を込めて革紐を彼女背中に振り下ろした。革紐はピシッと鋭い音を立てて白い華奢な背中に、赤い一筋の線をくっきりと刻んだ。焼け付くような激しい痛みが涼禾を襲う。と同時にこの後に続くだろう惨劇が脳裏に浮かんだ。涼禾は耐えきれずに、「いやーっ!!!」とありったけの力を込めて叫んだ。それでも男はニヤリと不気味な笑みを浮かべて再び腕を振り上げた。その時、隣室でドアが押し開けられ、男達が激しく争う音がした。その音がすぐに収まると、すぐにこちらの部屋に二人の男が駆け込んだ。男達は中の様子を見て一瞬顔を顰めたが、すぐに一人が犯人を制圧し、もう一人は上着を脱いで涼禾に掛けた後、彼女の拘束を全て取り去った。そして上着で涼禾の身体を包み込みながらゆっくり抱え起こしてくれた。「もう大丈夫ですよ。今度こそ全て終わりました。安心してください。」聞き覚えのある穏やかな男の声が聞こえてきたので、涼禾はゆっくり顔を上げると、大きく目を見開いた。「しま…だ、さん?」小さく呟く声に男が頷くと、安心したように表情を和らげて意識を手放した。涼禾が助け出されてから一月がたった。大田原は逮捕され、今までの様々な悪事に関する調査が行われている。尋問により証拠も出てきているようだ。浅野夫妻の事故や涼禾への殺人未遂
家に帰り着いた頃、子供たちは遊び疲れてぐっすり眠っていた。私と健人兄さんとで二人をベッドに寝かしつけてからリビングに戻ると、両親と颯太兄さんが心配そうな顔で話し合っていた。「どうしたの?何かあったの?」「ああ、涼禾。お疲れ様。二人は大丈夫だった?」「ええ、もうぐっすりだったからそのまま寝かせてきたわ。今日は本当に楽しかったようね。」「よかったわ。私たちもとっても楽しかったわ。」「でも何だかみんな心配そうよ。」「それがね、江崎さんの話なんだけどね。」母は、今日江崎さんが訪ねて来た理由を話し始めた。「そうだったの。それは心配ね。私たちも何か力になれることがあればいいのだけれど。」
翌日、予定通りの時間に現れた隼翔は、噂通りの長身でスタイルも良く、何よりも顔が素晴らしく整っていた。そして、やはり噂通りの冷淡な表情だった。出迎えたスタッフは緊張した面持ちで対応し、安西とも軽く挨拶をしただけですぐに更衣室へと入っていった。暫くして、涼禾が店に到着した。同じく緊張した表情で出迎えたスタッフは、涼禾を見るなり想像以上の美しさに目を奪われ一層緊張が増していった。しかし、涼禾が隼翔と違い穏やかな笑顔を浮かべながら「皆様、今日はよろしくお願いします。楽しみにしていましたので、試着出来るのがとても嬉しいです。」と丁寧に挨拶をしたので、ほっとして緊張もほぐれ、和やかに案内して
「涼禾、何か気になることでもあるのか。」涼禾は少し迷ったが、正直に考えていたことを三人に話した。「お母さんがSG警備に連絡したのは何日?」「多分、18日の10時頃に依頼して、お昼前には了解の連絡をいただいたと思うわ。」「加藤さんが入江さんを見かけたのも18日のお昼休憩だったわ。」「ところで、今回の作業の最終日に食事会をするのっていつ決まったの?」真剣に考えながら颯太が確認した。「それは…、最初の頃からだと思う。歓迎会的なことはしないけれど、最終日はみんなで食事会を計画しているので頑張りましょうって。」「うーん。何となく見えてきたね。」颯太は自分の考えを話し始めた。相手は、
「こちらが田沢さん、で、こちらが吉川さん。どちらもうちが長くお世話になっている方たちだから安心して。」「ありがとうございます。安藤です。お世話になります。よろしくお願いします。」「こちらこそ。安全にご自宅までお送りします。」挨拶を交わしている間に、別の男性がチェックアウトを済ませてくれていた。加藤は更に別の三人の男性と話をしたあと、彼らと共に涼禾の後ろに控えていた。思いがけずの大所帯となってしまったが、何とかその日の夜遅くに涼禾は無事に家に帰り着いた。「お父さん、お母さん、ただいま帰りました。いろいろ手配をしてくれてありがとう。」「何言ってるんだ。当たり前のことをしただけだ。それ







